🌀 本当はおもしろい複素数の世界
STAGE 7 ― e ― もうひとつの主役 ―
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STAGE 7e ― もうひとつの主役
成長の数と、曲がり続ける成長
🎯 ミッション
利息の計算から e=2.718… が生まれる様子を見て、「e^iθ = 単位円の上を回る点」という直感を手に入れよう。
未達成
ねこ博士
オイラーの等式には、もう1人主役がいる。e=2.71828…。こいつは銀行の利息から生まれた数なんだ。年利100%(1年で2倍)の夢の銀行に100万円を預けるとしよう。
うさ美
1年後に200万円ですね。それだけでも夢なのに……。
ねこ博士
ここで悪知恵を働かせる。「半年ごとに50%ずつ付けてくれ」と頼むと、1.5倍×1.5倍=2.25倍。毎月なら(1+1/12)¹²≒2.613倍。毎日なら≒2.7146倍。細かく刻むほど増える!
うさ美
じゃあ毎秒、いや毎瞬間つけてもらえば無限に増える……と思いきや、2.7146の伸びが鈍いですね。もしかして、限界がある……?
ねこ博士
鋭い。いくら細かく刻んでも 2.71828…=e という壁を越えられない。これが「連続成長の限界値」、自然対数の底 e だ。
限界値 e = 2.71828… 2倍 年1回 2.25倍 半年ごと 2.613倍 毎月 2.7146倍 毎日
年利100%を細かく刻むほど1年後の倍率は増えるが、e=2.71828… という限界値を越えられない
ねこ博士
いま出てきた、限界まで細かく刻んで毎瞬間・切れ目なく利息を付け続ける方式には、連続複利という名前が付いている。残高が時間とともにどう動くかをグラフにするとよくわかるよ。年1回なら、1年の終わりにポンと2倍になる階段。半年ごとなら2段の階段、毎月なら12段。刻みを細かくするほど階段は細かくなめらかになって、最後にはつるんとした1本の曲線に行き着く。この曲線こそが e^x だ。
時間 残高(倍) 0 半年 1年 1 2 2 2.25 2.613 e≒2.72 年1回 半年ごと 毎月 連続複利 = e^x
利息を付ける刻みを細かくすると、残高の階段はなめらかになっていき、「毎瞬間つき続ける」連続複利では1本のなめらかな曲線 e^x になる
うさ美
本当だ、階段がどんどん曲線に近づいていく……。e^x は「究極まで細かく利息がつき続ける預金残高のカーブ」のことだったんですね。
ねこ博士
そのとおり。ところで、この預金の増え方には大事な特徴が隠れているよ。利息はいま口座にある金額に対して付く。だから残高100万円のときより、200万円に育ったときのほうが、同じ時間で増える額も2倍になるんだ。
うさ美
残高が多いほど、増えるスピードも速くなるんですね。細菌の増殖と同じだ……。100匹が1時間で100匹増えるなら、200匹に育った頃には1時間で200匹増える。
ねこ博士
その通り。この「持っている量が多いほど、増えるペースも速い」――言い換えると「増える速さが、常に今の量に比例する」成長を、切れ目なく続けたものが関数 e^x だ。お金も細菌も人口も、ほうっておくと勝手に増えるものは、みんなこの形になる。
うさ美
でも待ってください。「量に比例して増える」だけなら、2^x や 10^x でも同じですよね? 2倍に育てば増えるペースも2倍。e だけの特徴ではない気がします。
ねこ博士
いい質問だ。そのとおり、1より大きい数の x乗はどれも「今の量に比例」して増える。ここで「増える速さ」の測り方をはっきりさせておこう。車のスピードメーターが「いまの時速」を表示できるのは、ごく短い時間に進んだ距離を、かかった時間で割っているからだ。増える量でも同じことができる。ちなみに、こうして「瞬間の変化の速さ」を求める計算には微分という名前が付いている――ここでは名前だけ知っていれば十分だよ。では実際に、x を 0.001 だけ進めて電卓で計算してみよう。
瞬間の増える速さ =(ごく短い時間に増えた量)÷(かかった時間) ……これを求める計算が「微分」 e^0.001 = 1.0010005… → 0.001 の間に、今の量の約 0.0010 倍増えた → 速さ = 今の量 × 1.0 2^0.001 = 1.000693… → 0.001 の間に、今の量の約 0.00069 倍増えた → 速さ = 今の量 × 0.69 10^0.001 = 1.002305… → 0.001 の間に、今の量の約 0.0023 倍増えた → 速さ = 今の量 × 2.3
うさ美
本当だ……。どれも「増えた量 = 今の量 × 定数 × 時間」の形になっていて、定数は 2^x なら 0.69、10^x なら 2.3。そしてぴったり 1 になるのが e^x なんですね。
x 0 −2 −1 1 2 1 2 3 10^x e^x 2^x 10^x(定数 2.3) e^x(定数 1) 2^x(定数 0.69) x=0 付近を拡大 1 1.3 −0.15 0 0.3 傾き 2.3 傾き 1(45°) 傾き 0.69 10^x e^x 2^x
1枚目:どの指数関数も、xがマイナスの側では高さ0に限りなく近づき、x=0でちょうど高さ1を通る。同じ「量に比例して増える」カーブ仲間で、定数(=連続複利の年利)が大きいほど急な坂で立ち上がる。2枚目:x=0付近の拡大図。点線は「x=0 での傾きのまま、まっすぐ進んだ場合」の直線。e^x の出だしは、横に1進むと縦に1増えるちょうど45°の坂(傾き1)。2^x はそれよりゆるい傾き0.69、10^x はずっと急な傾き2.3で、電卓で出てきた定数の正体は「スタート地点での坂の急さ」だったのだ。曲線が点線の坂から上へ離れていくのは、量が増えるほど、増えるペース自体も速くなっていくから
ねこ博士
そういうこと。そしてこの定数の正体は、さっきグラフで見た連続複利の年利なんだ。e^x は年利100%の連続複利の残高曲線そのものだったね。同じ連続複利でも、年利を約69%に下げれば残高曲線は 2^x になり、約230%に上げれば 10^x になる。年利がちょうど100%――つまり増える速さが、今の量そのものと等しいのが e^x だ。もっとも、こうなるのは不思議な偶然ではないよ。「速さがちょうど今の量と等しくなる数」を探して、それに e と名前を付けたのだから、そうなるのは当たり前――いわば約束事なんだ。むしろ大事なのは、そんな数がただ1つ、ちゃんと存在してくれること。そしてこの「ぴったり1倍」という約束が、このあとの回転の話で効いてくるよ。
(1+1/n)ⁿ は、n を大きくすると e=2.71828… に近づく e^x = 増える速さが、常に今の量とぴったり等しい連続成長 (増える速さ=今の残高×利率。2^x は年利約69%、10^x は年利約230%に相当し、年利ちょうど100%=「速さ=今の量×1」になるのが e^x)
ねこ博士
さあ、ここからが今日のクライマックスだ。指数の x に、虚数 iθ を入れてみたい。
うさ美
待ってください。i を「掛ける」と90度回転するのは分かりました。でも i を「指数に乗せる」……i乗って、そもそも何ですか? 「i回掛ける」なんて、回数の意味が分かりません。
ねこ博士
素晴らしい、そこを疑うのが正しい。素朴に「i回掛ける」と読んでも、たしかに意味はない。そこで数学者は、e^x を掛け算だけの形に書き直してから x に iθ を入れるんだ。連続複利を思い出そう。e^x は(1+x/n)のn乗の、nを限りなく大きくしたもの――つまり「1+ほんの少し」を莫大な回数、掛け合わせたものだった。この形なら、xが虚数でも意味がはっきりする。e^iθ =(1+iθ/n)を n回掛けたもの。ただの複素数の掛け算の繰り返しだから、これまでの道具がそのまま使えるよ。
うさ美
(1+iθ/n)は、ガウス平面でいうと「1 から真上に θ/n だけ上がった点」……。長さはほとんど1で、偏角はほんの少し。ということは、これを掛けるたびに、点はほんの少しだけ回転するんですね!
ねこ博士
その通り。たとえば θ=1、n=1000 なら、(1+0.001i)を掛けるたびに点は約0.001ずつ回り、1000回で合計およそ1回る。「i乗」の正体は、微小な回転の積み重ねなんだ。別の見方をすると、×(1+0.001i)=「今の量」+「今の量×i×0.001」。一歩ごとに、今の量と同じ大きさのペースで、i の方向――自分から見て直角――へ進んでいる。e^x の「今の量に等しい速さで伸びる」成長が、i のせいで直角方向に曲げられたわけだ。
うさ美
進む方向にいつも直角に引っ張られる……。それって、まっすぐ進めずに、ずーっと曲がり続けるってことですよね。あ! ハンマー投げだ! ロープで直角に引っ張られ続けると、円を描いてぐるぐる回る
ねこ博士
その通り、ハンマー投げのイメージで完璧だ。順番に確かめよう。まず原点からの距離がなぜ変わらないか。そもそも「原点から遠ざかる」とは、ロープの向きに沿って外側へ動くことで、「近づく」とはロープに沿って内側へ動くことだね。ところが e^iθ の点の動きは、いつでもロープと直角。外向きにも内向きにも、まったく動いていない。コンパスで円を描くときと同じだよ――鉛筆の先はいつも腕と直角の向きに動くから、針からの距離(=腕の長さ)は変わらない。
うさ美
うーん、でも……直角に「一歩」動いたら、ほんの少しだけ遠ざかりませんか? 三平方の定理で計算すると、距離1の点から直角に 0.001 だけ進んだときの新しい距離は √(1²+0.001²)=1.0000005……。わずかですけど、1より大きいです。
ねこ博士
実に鋭い、そのとおり! まっすぐな一歩だと、円周から少しだけ外へふくらむ。ただし計算してくれたように、0.001 の一歩でのふくらみは 0.0000005――歩幅の2乗のレベルでしか出ない。歩幅を10分の1にすれば、ふくらみは100分の1になる。連続複利で刻みを細かくしていったときと同じで、切れ目なくなめらかに動く極限では、ふくらみは完全に消えるんだ。だから距離は1ちょうどのまま。スタートは原点から距離1の「1」だから、点はずっと距離1の場所だけを動く。距離1の点を集めた円が単位円――「単位円の上をぐるぐる回る」ことになるわけだ。
うさ美
距離1は保たれる、と。じゃあ、円の上をどれくらいの速さで回るんですか?
ねこ博士
その質問に答える前に、角度の測り方の約束をひとつさせてほしい。ふだん角度は「一周=360度」で数えるね。数学にはもうひとつ、「単位円の上を歩いた弧の長さ」そのもので角度を表す測り方があって、これをラジアンと呼ぶ。小学校で習った円周の公式――円周 = 直径 × 円周率 = 2 × 半径 × π――を使うと、半径1の単位円の一周の道のりは 2π。だからラジアンでは一周=2π、半周=π、4分の1周=π/2 になる。
4分の1周(90°) 弧の長さ = π/2 ≈ 1.57 半周(180°) 弧の長さ = π ≈ 3.14 半径1 一周(360°) 弧の長さ = 2π ≈ 6.28
ラジアン =「単位円の上を歩いた弧の長さ」で角度を言い表す測り方。円周=2×半径×π なので、半径1なら一周の道のりが 2π。半分歩けば π、4分の1なら π/2
うさ美
角度を「何度回ったか」ではなく、「円周の上をどれだけ歩いたか」で表すんですね。その約束なら、「回った角度」と「歩いた道のり」が同じ1つの数になる……。
ねこ博士
その約束の上で、さっき電卓で確かめた「e の増える速さは今の量とぴったり等しい(×1)」が効いてくる。今の量の大きさはずっと1のままだから、点が円周を進む速さも、ずっと1。速さ1で θ のあいだ進めば、歩いた道のりは 1×θ=θ。つまり e^iθ は、単位円の上を弧の長さ θ――ラジアンで測った角度 θ――だけ回った点なんだ。半周歩けば、θ=π だよ。
実軸 虚軸 弧の長さ = θ 長さ1 進む向き(常に直角) スタート(1)
e^iθ の点は、進む向きが常に「原点から見て直角」。だから長さ1のまま単位円を回り、θは回った弧の長さ(ラジアン)になる
i乗の意味:e^iθ =(1+iθ/n)ⁿ(nは限りなく大きく)……「1+微小×i」を掛け続ける = 微小回転の積み重ね 「遠ざかる/近づく」=ロープ方向の動き。直角の動きには、ロープ方向の成分がない 直角の一歩のふくらみ:√(1²+0.001²) = 1.0000005…(歩幅の2乗レベル → 刻みを細かくすると消える) よって、動く向きが常にロープと直角なら距離1のまま = 単位円の上を進む ラジアン = 角度を「単位円の弧の長さ」で測る流儀。円周=2πr より、一周=2π、半周=π、4分の1周=π/2 速さ = 今の量 × 1 = 1 → θ のあいだに歩く道のり = 1 × θ = θ(=ラジアンで測った角度) まとめ:e^iθ = 単位円の上を、弧の長さ θ だけ回った点
確認クイズ

Q1. (1+1/n)ⁿ は、n を大きくしていくとどの値に近づく?

Q2. 関数 e^x の特徴として正しいのは?

Q3. θ を増やしていくと、e^iθ の点はガウス平面上でどう動く?

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